栃木県護国神社 資料館


軍歌「ニューギニア遠征行」の歌詞

寄贈:高村正義氏(少飛会)
協力:伊藤新太郎氏(ラバウル・ニューギニア陸軍航空部隊会)

第18軍(猛)経理部の渡辺文也少佐が東部ニューギニア戦線に従軍中、折に触れて戦況と感慨を読み込んだ詩に曲を附し、戦友達と歌っていたものです。戦後、ニューギニア東西会(東部・西部ニューギニア戦の戦友と御遺族の会)の会合において、元18軍司令部軍医の鈴木正巳少佐から、ニューギニア戦を代表する歌として紹介されたものに、同会の伊藤新太郎氏(西部ニューギニアにおける、ホーランジャ〜サルミ間の死の撤退からの生還者)が親戚のミュージシャン、大浜和史氏(ピンクレディーの音楽監督等を担当)の助力により、シンセサイザーの曲をつけ、テープ化して御遺族や生還者の方々に配布しました。

このテープは、当神社にてお聞き頂けます。哀調を帯びたメロディーから、ニューギニアにおける過酷な戦いの情感を感じ取っていただければと思います。社務所までお申し出ください。

※第51師団(基兵団)、第41師団(河兵団)の戦友の皆様は、制作者からダビングの許可を頂いております。御入用の方はお申し出ください。
また、他の方でご希望の方は、とりあえず社務所にご相談ください。





ニューギニア遠征行

作詞作曲:渡辺文也(第18軍経理部)
編曲:大浜和史
歌:伊藤新太郎(第4航空軍参謀部)

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若き命の象徴(しるし)なる 皇師(みいくさ)の名の十八を
栄光(はえ)の冠(かむり)と戴きて ああ征かんかな南海行
祖国の急に殉(じゅん)ぜんと 集い結びぬ十五万

A
ああ南溟(なんめい)の果て遠く 愉楽(ゆらく)の夢に酔いしてふ
殆(あや)ふかりけりモレスビー 一握(いちあく)の米飯(いい)ありなばと
血涙(なみだ)に霞む明(あか)き灯や 痛恨逸すこの長蛇(ちょうだ)

B
永劫(とわ)の黒潮紅(あけ)に染み 遠く南に流れ行く
ああ太陽(ひ)は落つる海峡(うみかい)に 
鬼哭(きこく)啾々(しゅうしゅう)生霊(せいれい)の
遺恨(うらみ)は永しダンピール 彷徨(ほうこう)の悲歌(ひか)消ゆべしや

C 
サテルベルグの夜嵐(よあらし)に 傷(いた)める戦友(とも)を看とり護りつつ
かたみに啜(すす)る塩粥や 凶星墜(ほしお)つるかなブナ、ワウに
フィンシュハーフェン既に陥ち ラエ、サラモアも侵(おか)されぬ

D「南東作戦編」
霜置く山脈(やま)の神無月 サラワケットの月蒼(あお)く 
怪鳥翔(か)くる東へ  悲憤(いかり)にうるむベナベナや 
乏しき糧食(かて)を炊(かし)ぎつつ 戦友(とも)焼く荼毘(だび)の火も寒し
  
E「ハンサ転進編」
殪(たお)れし戦友(とも)を励(いた)はりつ 頼む命の飯盒(はんごう)に
残んの米を分けありと 悲電(ひでん)相踵(あいつ)ぐ東より
弥生の空の半月に 潮騒暗きハンサ湾
  
F 「雌伏編」
アドミラルティー敵上陸(のぼ)り パラオの月も曇りけり
されど澄みたる南(みんなみ)の 卯月半(なか)ばの蒼穹(そうきゅう)や
いまいく敵機(てき)の編隊は ああホルランジャ西を指す

G 「悲戦アイタぺ行編」
悲風啾々(ひふうしゅうしゅう)夜は更けて 暗き海面(うみ)を渡り行く
挙軍一體(きょぐんいったい)火と燃えて 啓開(ひら)く血路のアイタぺや
乾坤一擲(けんこんいってき)西を衝(つ)き 
断腸(だんちょう)青史(せいし)に列すべし
  
H 「玉砕決戦編」
そのかみ寒し易水(えきすい)の 一度(ひとたび)去りて還らざる
捨身(しゃしん)の壮士(そうし)君を見る 
君いまゆ征くや潜入行(せんにゅうこう)
共に歌はんいざさらば 軍玉砕(ぎょくさい)の長恨歌(ちょうこんか)
  
I 「終戦編」
をろがみまつる北の方(かた) 防人(さきもり)われ等(ら)名に負(お)はず
父祖に見(まみ)えん面(おも)もなし 
一億(いちおく)民族(たみ)の運命(さだめ)をば
尊き御身(おんみ)に負ひ給ふ 畏(かしこ)き勅語(みこと)に咽(むせ)ぶかな




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